≫2001年〜の映画

武器を持たず戦場へ行った男の実話『ハクソーリッジ』

2017/06/21

観た映画。2017年度のアカデミー賞®︎で編集賞と録音賞の2部門を受賞した、メル・ギブソン監督の『ハクソー・リッジ』(原題:HACKSAW RIDGE)。

ハクソー・リッジ (オリジナル・サウンドトラック)

Sponsered Link

武器を持たず戦争に行った米兵の実話

第二次世界大戦で最も悲惨だったという日米軍による「沖縄戦」において、宗教上の理由から、ただ一人武器を持たず、衛生兵としてたったひとりで75人もの命を救ったデズモンド・ドスという米兵の実話を基につくられた映画。久しぶりに、こんなにも心が揺さぶられる映画を観たような気がします。

主演は『アメイジング・スパイダーマン』でスパイダーマン役を演じ、最近ではマーティン・スコセッシの『沈黙 -サイレンス-』での記憶が新しいアンドリュー・ガーフィールド。彼の出演作をそう多く観ているわけではないですが、本作でのガーフィールドは私が観て来た中では最も気概に満ちていて素晴らしかった。

デズモンド・ドスという青年

本作は大きく沖縄戦に赴くまでと後の2幕に分けられ、前半ではデズモンド・ドスという青年の人物像が丁寧に描かれていく。なぜ彼が銃を握らないのか、人を殺せないのになぜ米陸軍に志願したのか。彼の信念や家族、恋人との関係を丁寧に、かつ端的に描写しており、それが本作を単なる戦争映画ではなく、ひとりの青年のドラマとしても成功させているのだと思います。

戦地へ行くのに人を殺せないという、他の志願兵や教官にとって理解できない考え方と、細身でどこか自信なさげな口調などから「臆病者」と酷い扱いを受けるドス。それでも彼は「皆は戦地で殺しても、自分は彼らを助けたい」という信念を貫き通し、沖縄戦において75人もの命を救ったのです。

実際、ドスは訓練には人一倍取り組んでいるし、前線で戦う姿を見れば、いかに彼が勇気と正義を持ち、臆病とはかけ離れた存在であるのかよく分かる。

リアリティの追求された戦闘シーン

本編の6割以上が戦闘シーンで、初っ端からとにかくリアルな映像の連続なので胸が痛む。それが日本兵の降伏まで延々と続くのだから、本当に苦しい。

血が噴き出すのは当然のこと、銃弾で身体を撃ち抜かれたり、手榴弾で体の一部、もしくは大部分を失った兵士たちが地面に倒れ身を悶えている姿には、想像を絶するリアルな戦争を感じさせられる。

もしかしたら、戦争で最も苦しんでいるのは即死せず重症を負って身動きできなくなった兵士たちなのかもしれない。彼らは生きているのに、自力で動くことはできず、ただ襲ってくる激痛に悲痛の声をあげることしかできない。「早くモルヒネを打ってくれ」と叫ぶ兵士たちを見ていると、その時は死んだ方がマシだとさえ感じていたのではと考えてしまう。

そんな一刻を争う容態の兵士たちを、ひたすら処置してゆくドス。もちろん、自分もいつ撃たれてもおかしくない状況で、ましてや人を殺せない人間がバタバタと死んでゆく仲間を目の前で見る辛さとは、どれほどのものだったのだろう。

いずれにせよ、私には兵士たちの景色も苦痛も理解はできないけれど、この映像を通じて戦争や殺し合いが何を遺し、今この映画が何を訴えているのかについて深く考えさせられた。

本作での視点は完全にアメリカ側からなので、当然わざわざ日本兵を好意的に描くことはあない。むしろ日本兵の卑怯というか、ずる賢い戦法も見受けられるほど。しかしそれは嘘の描写でもないし、それが不愉快だとか、反日的だという感情は、私の場合一切湧いてこなかった。

それはおそらく、本作がデズモンド・ドスというアメリカ衛生兵の救出劇を描いていても、決してドスのヒーロー映画というわけではないから。もはや『ハクソー・リッジ』はそんな「味方」「敵」という概念を超え、ドスを通じて「沖縄戦」への遺戒を込めた作品なのだと思います。

戦闘シーンはグロテスクな描写の連続ですが、ところどころ目を覆ってでも、耳を塞いででも、いろんな人に観て欲しいと思った映画です。

作品情報

【監督】メル・ギブソン(『ブレイブハート』ほか)
【キャスト】アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー、ほか
【制作年】2016年
【制作国】アメリカ合衆国、オーストラリア
【配給】キノフィルムズ
【上映時間】139分
【公式サイト】http://hacksawridge.jp

この記事をシェアする!
にほんブログ村 旅行ブログへ ブログランキング・にほんブログ村へ

-≫2001年〜の映画


コメントをする

関連記事

センター分け、はじめました。

都会で今を生きるということ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』

観た映画。『舟を編む』や『バンクーバーの朝日』などの石井裕也監督による最新作『夜空はいつでも最高密度の青色だ』。 詩人で …

センター分け、はじめました。

『ゼロ・グラビティ』原点の映画『ノー・エスケープ 自由への国境』

観た映画。メキシコからアメリカへ不法入国を試みる移民たちを描いた映画『ノー・エスケープ 自由への国境(原題:Desier …

センター分け、はじめました。

続編も絶好調!『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

観た映画。ついに公開された最新作!『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(原題:Guardians of th …

プロフィール

名前:haruno / 気が向いたときにサクッと一人旅するのが好きな東京人です。だいたい映画と旅行と美味しいもののはなし。 more