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午前十時の映画祭8:その①『裏窓』

2017/05/07

8回目を迎えた「午前十時の映画祭」が今年も4月から全国のシネコンで開催されています。この映画祭は1〜2週間ごとにラインナップが変更され、一年間で28本の旧作映画が上映されるというもの。

去年までは誰でもタイトルくらいは聞いたことのあるような名作クラシックやちょっとコアな作品を含め1980年以前の映画が多かった印象でしたが、今年は2001年に公開された『アメリ』がラインナップされていることを筆頭に、例年以上に1990年以降の映画が多くなっているようです。西部劇とミュージカル好きなので、一本もラインナップされていないことにはちょっと残念。

裏窓 (字幕版)

今回観たのは楽しみにしていた作品のひとつである、アルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓(原題:Rear Window)』。サスペンス映画の名匠であるヒッチコックが作りあげたワンセットドラマで、主演はジェームズ・スチュワート。ヒロインにはグレース・ケリー。

J・スチュワートは私が好きな映画監督であるフランク・キャプラの映画に何本か主演していて、ヒッチコック映画にも4本出演しています。親しみのある声と喋り方が魅力的で大好きな俳優です。

「覗き見」からはじまった一大事

J・スチュワート扮するジェフは報道カメラマンなのですが、取材中に事故で左足を骨折したため、現在は部屋から出ることのできない退屈な毎日。そんな彼の唯一の暇つぶしは自室(マンション)の裏窓から見える景色を眺めること。すなわち、他人の日常の「覗き見」です。そこには口喧嘩ばかりしている夫婦や新婚カップル、バレリーナ、作曲家など個性豊かな人たちが暮らしています。

彼らはそれぞれいたって普通に過ごしているだけなのに、第三者の目を介して見るとずいぶん奇妙に映るのが面白いところ。例えばいつもベランダを寝室代わりにしている夫婦は、当たり前のようにベランダに布団を敷き、目覚まし時計を手すりに吊るして寝起きしている。はたから見ればおかしな光景だとしても、当人からすればそれはごく普通のことに過ぎないのです。

隔離された場所に住んでいるという訳でもなければ、誰もが誰かに生活の一部をごく自然に「覗き見」されている可能性がある。「あの人は毎週火曜日の朝6時15分にゴミを捨てに来る」なんて、顔も知らない人に一方的に知られているかもしれません。そんな些細なことをヒッチコックが一本のサスペンス・コメディとして作り上げてしまったこの映画。見れば見るほど興味深い映画だと思います。

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計算しつくされた構造

この映画の画期的なところは、映しだされるのが「ジェフの視点からみた、ジェフの部屋の窓から見える景色」と「ジェフの部屋での出来事」のみに限定されるワンセットドラマであるところ。一緒になって彼の視点を追うように観察していると、マンションの配置からその後ろにちょっとだけ垣間見える道路まで、ものすごく巧妙に設計されていることがわかります。このちょっとしか見えない道路がかなり重要なポイントになってきたりもする。

さらに、覗き見に望遠レンズを使う、比較にフィルムのネガを使う、など彼がカメラマンであるという設定がラストに至るまで最大限に活かされており、観客もジェフと一緒に望遠鏡を介して「覗き見」できるような演出が楽しいです。設定上、表情や動作だけで表現される場面が多々あるので、サイレント映画を見ているようでもあって、本当に見るたびに発見のある映画だと思います。

もちろん、ヒロインであるリザ(グレース・ゲリー)の美しさとその活躍ぶりにも注目。ある人に『裏窓』見てきて云々と話をしたら、なんで容姿端麗でお金持ち美女が文句垂らしで冴えない中年男に惚れると思う?それは映画だからだよ、と教えてもらいました。「絶世の美女が登場し、男を助けて大活躍する、それが映画。」なんだって。「映画だから」って言葉、ものすごくいいなあ。「映画だからできることをするのが映画」という根本的なことをダイレクトに感じることのできる『裏窓』、何度でも繰り返し見たい作品です。

★★★★☆

作品情報

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【キャスト】ジェームズ・スチュワート、グレース・ケリー、レイモンド・バー、セルマ・リッター、ほか
【製作年】1954年
【製作国】アメリカ
【上映時間】112分

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